虚偽自白をとる方法(袴田事件)

2016年12月18日

今日の朝日新聞デジタルで,次のような報道がありました。

「トイレ行かせず自白迫る 袴田事件,取調べ内容判明」

(→魚拓

 

 「袴田事件」とは,1966年に静岡県清水市(現静岡市)で起きた強盗殺人及び放火事件の被疑者として当時プロボクサーだった袴田巌さんが逮捕され死刑判決を受けた事件です。袴田さんは逮捕・勾留中ずっと,自分は犯人ではないと否認していましたが,勾留期間(延長期間を入れて20日間)満了の3日前に「自白」してしまいました。公判(裁判)段階で再び否認に転じましたが,1968年に静岡地裁で死刑判決がなされ,控訴,上告も棄却されて1975年に死刑判決が確定しました。

 その後袴田さんは,1981年に第1次再審請求(確定判決が誤りであるとして争う手続)を行いましたが棄却され,さらに2008年に第2次再審請求を申し立てました。そして2014年,ようやく静岡地裁が再審請求を認め,同時に死刑と拘置の執行停止を決定して,48年にわたる拘束が解かれました。

(詳しくは「袴田ネット」をご覧ください)

 

 第2次再審請求の中で,袴田さんの取調べや弁護人との接見を録音した録音テープの存在が明らかになり,それが弁護人に開示されて,内容が分析されました。今回の朝日新聞デジタルの報道は,その分析内容に関するものです。

 

 報道によると,袴田さんが「すいません,小便行きたいですけどね」と求めたところ,2人の取調官が「(小便を)やらしてやる」「その前に返事してごらん」などと言って自白をさせようとしたということです。録音テープにはその後,「便器もらってきて。ここでやらせればいいから」という取調官の声が入っていて,「そこでやんなさい」と袴田さんを促す様子や,「出なくなっちゃった」という袴田さんの声,続いて実際に小便するような水の音なども確認できるということです。

 

 狭い取調室において人前で排尿させられることを想像してみてください。音を聞かれ,臭いをかがれ,姿勢や動作全てを見られます。もしかすると性器を見られていたかもしれません。どうでしょう。袴田さんはどれほど恥ずかしく,どれほどプライドを傷つけられ,尊厳を踏みにじられたたことか。

 

 袴田さんは1審の静岡地裁の公判で、「(小便を)やらせないことが多かったです。まともにやらしちゃくれなかったです」「取調室の隅でやれと言われてやりました」と,取調室で排尿することを強要されたと供述しました。これに対し,取調官は「そのようなことはありません」などと否定する証言をしていました。

 

 今回発見され分析された録音テープにより,袴田さんが供述したことが真実であり,取調官が偽証していたということが明らかになりました。 

 

 以前,「裁判員になるために知っておきたい3つのこと」にも書きましたが,密室での取調べでは,私たちの想像を遙かに超える暴行・脅迫や,人の尊厳を踏みにじる行為が行われることがあります。そして,取調官は,そのようなことは行っていないと嘘をつくことがあります。

  袴田事件はまさにそれでした。

 

 そのような狂気に満ちた取調べをさせないために,あらゆる事件の取調べを録音・録画する「取調べの可視化」が絶対に必要です。最近の法改正で裁判員裁判対象事件の取調べが可視化されることとなりましたが,不十分です。軽微な事件も含む「あらゆる事件」の可視化が必要です。

トラックバックURL

コメント & トラックバック

コメントはありません

コメントフィードを購読する

コメント





*