2016年3月14日(月)
1 「水曜会」にお招きいただいて
高岡問屋センターの若手経営者の集まり「水曜会」にお招きいただき,
「裁判員になる前に知っておきたい3つのこと~弁護人からのメッセージ」
と題して1時間ほど話をさせていただきました。
経営者の集まりなので,取引先とのトラブルとか労務管理とか,経営に役立ちそうな話題も考えましたが,他の士業の業務と重ならないこと,弁護士でなければ話せないことということで,刑事事件を取り上げました。
2 知っておきたい3つのこと
裁判員として「知っておきたい」(弁護人として知っておいてもらいたい)ことは実はたくさんありますが,今回は以下の3つに絞りました。
① 刑事訴訟の原則「疑わしきは被告人の利益に」の話
② 無実なのに自白してしまう人がいる=自白を疑うべき場合があること
③ 事件の背景を知り再犯防止・人生立て直しの支援をする必要があること
特にお伝えしたかったのは②です。
布川事件(※1),足利事件,氷見事件(※2),志布志事件,PC遠隔操作事件(事件本体ではなく,19歳の少年AのPCから意図せずに殺害予告が送信され,これをAの犯行として逮捕されて保護観察処分≒有罪認定を受けた事件)など,やってもいない人が自白してしまった例をご紹介しました。
※1:日弁連が事件の顛末について詳細な報告書を発表しています。→ここ
※2:富山県氷見市で発生した冤罪事件です。
また,2010年に大阪府警の警察官が,任意同行した被疑者の取り調べで「殴るぞ!お前!」「手ぇ出さへん思たら大間違いやぞ!コラ!」などと言って脅迫し自白させようとした事件がありました。みなさんにその取り調べの音声を聞いていただきました。
現在でもこのような犯罪的な(というか犯罪です。その後脅迫罪で罰金刑を受けました。)取り調べが行われていること,そんな取り調べでは確かに無実の人が自白してしまうこともあるだろう,ということをお伝えできたと思います。
3 裁判員へのお願い
従来から「真犯人でもない人が自白するわけはない」と言われてきましたが,それはもはや常識(経験則)ではありません。逆です。「真犯人でもない人も(虚偽の)自白をすることがある」というのが常識です。
裁判員になるみなさま,取り調べで自白していた被告人が裁判では「本当はやってないんだ」と言って否認する事件に遭遇したら,ご注意ください。自白は真実ではないのかもしれない,と疑ってください。そして,「疑わしきは被告人の利益に」判断してください。
4 最後に
今回「水曜会」に声をかけてくださった(有)沖商店(※3)の沖昌幸社長に感謝いたします。
※3:沖商店では,小学校から高校までの制服,ビジネスウエアなどを扱っておられます。小売りもされています。うちもお世話になりました。