2016年4月27日の北日本新聞に
「世界に生かせ イ病の教訓」
という記事が載っていました。
記事によると,イタイイタイ病(イ病)の教訓を発展途上国に発信し環境保護に生かしてもらうため,県立イタイイタイ病資料館が留学生向けの講座を開催するとのことです。
イ病の教訓を世界の環境保護に役立ててもらおうという画期的な取り組み。イ病弁護団の端くれとしては,実はとても感慨深いものがあります。今回はその思い出話を。
私が弁護士になった(と同時にイ病弁護団に加入した)2003年当時,イ病をめぐる闘い(イ病患者救済,発生源対策,土壌復元)はまだ収束の兆しもなく,弁護団が毎年何度も集まって会議を開き,発生源対策(公害防止対策)について神岡鉱業とどう交渉するか,毎年6月の環境省交渉で何を要求するか,イ病不認定患者の不服審査請求をするかといったことを繰り返し議論していました。
その会議の中で,イ病弁護団の団長であった近藤忠孝弁護士(故人)がよく,こうおっしゃっていました。
「三井金属・神岡鉱業は,世界に類を見ない無公害産業を作り出した。世界史的大事業を成し遂げたのだ」
「この成果を,世界に輸出すべきだ」
すでに当時,被害地域住民の目(監視),協力科学者(※)の知恵,三井金属・神岡鉱業の努力によって,神通川のカドミウム濃度はほぼ自然界値にまで達していました。かつてあれほどの公害をまきちらし被害を与えてきた三井金属・神岡鉱業が,神通川をほぼ自然の状態へ戻したことについて近藤先生は,「世界史的大事業を成し遂げた」と評し,この成果を世界に発信し,輸出すべきだと主張されていたのです。
※協力科学者:被害地域住民のために三井金属・神岡鉱業のプラントを点検監視し,同社らに公害防止対策を提案してきた科学者のグループ。
そして今日,近藤先生の思いが,イタイイタイ病資料館によってひとつ(わずかな一歩ですが)実現したのです。
近藤先生がお元気だったら,とても喜ばれたと思います。
(次は,40数年前にイ病訴訟を闘った弁護団について書いてみようと思います)
イ病資料館による留学生向け講座の案内(もう終わってしまいましたが)